結婚に伴って都会から田舎へ移住しました。
生まれ育った場所でしたが、人の多い東京にも嫌気がさしていたこともあって、希望を持って田舎へと向かいました。
田舎への憧れもあったことは事実ですが、憧れだけでは生活できません。
外側から見る景色とその内側でする生活には大きな隔たりがあることは、暮らしてみてすぐにはっきりと自覚しました。
田舎は車がなければ半人前
移住したのは北海道の片田舎です。
日々の買い物や簡単な病気などは車で30分ほどの隣町で済みますが、大きな病院やたくさんの選択肢を求めるならば車で2時間ほどの市まで行かなければいけません。
交通インフラも悪く、車は必須の地域で移住後、必死になって車の免許を取得しなんとか運転しています。
町の中では徒歩や自転車で移動している人は見当たりません。
徒歩や自転車で移動しているのは、小学生や中高生、そしてもう車に乗ることさえおぼつかない老人ばかりです。免許を取れる年代の人が自転車に乗っていると、「おかしな人」扱いされます。
ペーパードライバーは半人前で、社会人失格くらいの勢いです。
歩いて五分のところにも車で行くのでほとんど歩きません。
よそ者への詮索が大好物
田舎で辟易したのは詮索の多さでした。
地域全員皆知り合いという地域に来て、初めはよそよそしく当たり障りなく接してくれた人たちでしたが、いざコミュニティーに迎え入れられると根掘り葉掘りではなく、根を掘って土を取り除いて、切り刻んで中身を曝け出させようとするくらいに色々なことを聞きます。
噂話くらいしか娯楽がないのです。
東京から来た、それだけでもう近所のお年寄りのいいカモです。
しかも東京というイメージは「汚らしい都会」なのか、東京出身ってだけで「病気を持っているかも」「あすこのうちは東京者に騙されてる」だの騒ぎ立てる人もいて閉口します。
もちろん良識ある人や親切な人も多いのでなんとか暮らせていけますが、ちょっとでも彼らの質問にいいよどむと「田舎者だとバカにして」だの「東京から来たことを鼻にかけていると」と影でこそこそ噂します。
決して正面から行って来ないのが陰湿で腹がたちます。
そのくせ、面と向かえばそんな悪口は行っていませんよ、という顔で擦り寄ってくるのが腹立たしいです。
強制参加のイベント盛りだくさん
田舎は人数が少ないので、イベントは町内会や子供会(小学校の保護者会みたいなものです)で行います。
それは地域全員がほぼ強制的に参加させられます。
特に幼稚園、小学生、中学生世帯の父母は必ず何かしらの役割を持って参加しなければ、代々、本当に末代まで「あそこの家は〜」と言われる始末です。
イベントはお祭りだけではなく、町内の一斉清掃や盆踊り、雪まつり、小学生の夏休みのお泊まり会など多岐に渡ります。
賄いやコミュニティセンターの清掃管理、回覧板や町内会費の集金、そのほかに檀家寺への寄付金の集金など外回りで忙しいです。
イベントのお手伝いは1年目はお客さん的な立場で次の年からはこき使われています。
他地方出身者は珍獣
「東京から来た人」という事で珍獣扱いされます。
近くから嫁いだ人は同じ北海道民で、隣町に実家があり、コミュニティ的には似たようなものなので、珍しさがないのでしょう。逆に東京から人がくるというのは「ゴジラが来た」くらいの衝撃があったようです。
同じ北海道でも札幌や旭川から来たという人も珍獣扱いされています。
遠く離れた土地から違う文化を背負ってやってきた人間というのは、その土地の文化をかき回す者として敵視する傾向が中高年者にはあるようで、年齢が上がるにつれ、閉鎖的なものの考え方が強まっています。
人間関係のコミュニティが狭すぎる
小さい子供を持つ母親たち(と言っても同年代はいませんが)は、そこまで閉鎖的ではなく、逆に東京への憧れが強いのか、東京の話を聞きたがります。
そこまで行動範囲が広くなく、生まれ育った地元しか知らないので彼女たちの知りたい事の半分も答えられず、ここでもまた「すかしている」と言われるのは少しだけ悲しいです。
子供の同級生のお母さんたちは結構若い人が多いと思いきや30前後の人が多いです。
もちろん極端に若い人もいますが、少数です。
シングルマザーの人や再婚して二度目の子育てという人もいます。
そこは東京もどこも一緒だなと思いますが、驚くのはコミュニテイの狭さです。
元旦那の友達と再婚は普通にあるし、昔付き合っていた人と再び付き合っているもよくある話です。
同じ人と二回結婚して二回離婚したという人もいて、狭い人間関係の中でよく回っているな、感心するとともに、周りの人がよくもまあこんなに詳しく知ってるな、と呆れます。
そして伝説になる
恋愛系の話は矢のように各戸へ行き渡り、いつまでもいつまでも語り継がれます。
近所の家のおばあさん(推定80才オーバー)は、離婚して戻ってきたいわゆる出戻りですが、いまだに「あそこの家の出戻りは」扱いです。
閉鎖的なコミュニティではよくある話かもしれませんが、とても恐ろしいです。
田舎の虫はどうしても慣れない
虫は普通にいます。
ワラジ虫、ゲジゲジ、蜘蛛、カマドウマ‥飼ってるのかなと思うくらいいつでも家の中にいます。
夏から秋にかけてはカメムシがいたるところにいるし、秋から初冬にかけては外を歩くだけで雪虫で全身真っ白ということも珍しくありません。
これだけは慣れません。
虫に耐性がないので初めのうちは騒いでいましたが、今は我慢しています。
しかし、我慢しているのと慣れるのは大違いです。
虫を見たら内心パニックです。
これだけは「田舎が嫌」と思います。
2ちゃんねるまとめを見ても田舎の虫問題は、不法侵入の近隣住民や車問題、仕事問題とともによくあるネタですが、本当に、本当に、虫だけは嫌です。
中途半端な田舎が一番きついのかも
田舎は不便だけど自然豊か、というところに価値を見いだせればいいのですが、自然はない田舎も存在します。
近隣の町は田舎でも都会でもないシャッターばかりが目立つ町です。そこへ移住した人は早々に戻ってしまいました。
スーパーやドラックストア、コンビニエンスストアなどは近くにあるけれど選択肢がない、中途半端に人もいるので何かよそよそしい、田舎というほど自然はなく、都会というほど便利ではない、全部が中途半端で住みにくいとこぼしていました。
田舎ももう嫌だけど都会も嫌
田舎に来たのは、東京に見切りをつけたということも関係していました。
生まれ育った町ですから愛着はありますが、人の多さや田舎とは違う人の陰湿さに嫌気がさしていました。
田舎も陰湿です。
閉鎖的な物の考え方、物差しの違いで一歩間違えれば地域総出のいじめに発展します。
でも、一旦コミュニティに迎え入れられ、「そういうもんだ」と自分で納得すると結構過ごしやすいです。
この「そういうもの」に納得ができなければ、「田舎が大嫌い」「もう田舎は嫌だ」という感情に振れてしまうのでしょうか。
あとは便利な生活を手放す勇気があるかどうかです。