居酒屋のような席でも、しっかりと「上座」「下座」が存在するのをご存知ですか?
「上座」というのは、日本の室内に関するマナーにおいて、立場の高い人が座る席の事を表します。
基本的には、入り口から最も遠い席が上座となり、入り口に近くなるにつれて下座になります。
ですから、同席する人の中で自分が一番後輩ならば、率先して下座に座るようにしましょう。
これは、日本独自の文化で、和室でも洋室でも同じく、入り口の扉から一番遠い奥の席が上座なのです。
古い文化なので、若い人には馴染みがないかも知れませんが、現在でも目上の人と一緒に席に着く時は、相手が目上であればあるほど意識しなければいけません。
上座は、最も位の高い席という位置付けになるので、目上の人はとにかく奥の席へ案内するようにしましょう。
居酒屋においての上座
室内での共通のマナーになるので、もちろん居酒屋のような飲食店舗でも同様の考え方をします。
上司や先輩が一緒の席には、必ず一番目上の人に上座に座ってもらいましょう。
なぜ、入り口近くが下座とされるのでしょうか?
入り口近くは、人の出入りが激しく一番落ち着かない席です。
さらに、頻繁に対応しなければならないため、一番下の立場の人が座る席ということになります。
特に個室があるような居酒屋でアルバイトをする際には、この上座と下座のマナーを覚える事も大切な仕事のひとつとされます。
一方で、店側の指導が不十分で、見習いの時に、どうすれば良いか困ったという人も多いのです。
いくつか困ったという例をあげます。
「座敷での宴会の際、奥の上座にどうやって飲み物を置けばいいか困った」
これはよくありますし、共感する人も多いのではないでしょうか。
奥の席は遠いので、近づける限界まで近づいて置けば良いのです。
そこから先は、たいてい周りの人たちが補助してくれるものです。
「宴席の準備の時、食器や箸のセットを置く場所に迷った」
個々に並べるのではなくて、まとめて置いておく場合は、入り口近くの下座よりにまとめましょう。
上座に置いてしまうと、目上の人に食器を取ってもらう事になってしまうかも知れません。
失礼のないように、セッティングしましょう。
他にも、お茶やおしぼりを渡す際にも奥から渡すようにするなど、意識して接客をするようにしましょう。
新人・若い人は意外と知らない?ヒヤヒヤしたエピソード!
部署に配属されてきた新入社員の女性2人の歓迎会をやる事になりました。
居酒屋の個室の座敷を予約して、仕事終わりに部のみんなで向かいました。
座敷に着くと、みんな遠慮がちに
「どこに座る?」
とソワソワし、なかなか座ろうとしませんでした。
そのうち誰かが、その新入社員たちに言いました。
「どうぞ座って!」と。
2人は顔を見合わせて、一番奥の上座へ。
その様子に、場のみんながざわつきます。
ちゃんと説明しなかったのも悪かったかと、下座に促そうとした時に部長が到着!
ちょこんと上座に座っている彼女たちを見て、一瞬動きが止まる部長。
「あ、すみません部長。ちょっとそこ部長が座るからこっちに座ってもらってもいい?」
慌てて彼女たちにそう言うと、部長はにっこり笑って、
「いやいや、いいからいいから。今日は君らが主役だから。俺、ここ座るから」
と、優しく言って彼女たちの隣に座りました。
普段からみんなに慕われている良い部長なのですが、さらに尊敬してしまいました。
まさに、神対応だと思いました。
後日、新入社員の女性たちに、上座と下座の説明をして注意点などを教えました。
彼女たちは、部長に失礼を謝罪したらしいのですが、部長は笑っていたそうです。
目の前で怒らずに、後できちんと教えた私たちには、部長からこっそりお褒めの言葉をいただきました。
部内がさらにまとまった気がしました。
以上のような経験をした人は、少なくないのではないでしょうか。
どちらの立場でも、経験し得る事です。
知らずに上座に座ってしまうのも、悪気があるわけではありません。
奥の壁側の席なので、もたれて楽に座れるし、端なので気をつかわずに済む、などという理由から選択するという事でしょう。
失敗したら誠意を持った対応を!
常識的なマナーなので、知っておくべき事ではあるのですが、今まで知る機会がなかったというのもよくある事です。
もし、知らぬがゆえに失敗してしまっても、落ち込む事はありません。
相手に対して失礼にあたる事をしてしまった時には、素直に謝りましょう。
そして、同じ失敗をしないようにこ気をつけるようにしましょう。
たとえ失敗してしまっても、その時の対応ひとつで相手に与える印象は全く変わってくるものです。
そして、逆に自分がマナー知らずの失礼な対応をされた時には、頭ごなしに怒鳴りつけたりするのは控えた方が良いでしょう。
誰にも失敗はあります。
エピソードの中の部長や先輩たちのように、相手に思いやりのある対応をしましょう。
目上の人を敬う、という事は日本ならではの素晴らしい文化のひとつと言えます。
大切にしていきたいものですね。